『ハンニバル2』のためにhuluに戻ったのだ [ハンニバル]

     
『ハンニバル2』
入院中、スマホでドラマが観たくて会員になったものの、
吹き替えの少なさに三年前縁を切ったhulu。

待ち続けていたものの、dビデオでは、それこそ1さえ字幕版しかやってくれないので、
業を煮やして下調べしたところ、huluは『クリミナル・マインド』など、
なかなか吹き替え版のドラマが増加傾向にあると判明。
何より、『ハンニバル』のレクウィル小説で続きが観たくなって、
ガマンできず再加入。
13話なので、一ヶ月980円と考えると、
見終えたら退会するのもアリかな、と。

以下、ネタバレ有りの感想など。
……独自の見解などありますのでご注意を。


『羊たちの沈黙』の劇場公開が1991年とのこと。
普通に劇場版を劇場で観て、
その足で池袋の旭屋書店にて
ズラッと並べられた原作本を購入したのもなつかしい想い出(´д`)

トマス・ハリスにすっかりハマッて、
すぐさま『レッド・ドラゴン』を読破。
ジョディー扮するFBI実習生クラリスより、
レクター博士を逮捕したもう一人のモンスター、
ウィリアム・グレアムに夢中になったのも、なつかしい想い出(´д`)

でも25年前は、物語や世界観より、
アンソニー・ホプキンスとジョディー・フォスターがとにかく評価されて、
〝その前の話〟はかなりないがしろにされていたんですよね。
一応『レッド・ドラゴン』は映像化されていましたし、
そんなに悪くも無かったし、
その後、エドワード・ノートン先生によるリメイクもされましたが、
これも、わたしが期待していたほど、
複雑な心理を持つグレアムを〝モンスター〟として描いてなかった(´д`)

そうして、あれから25年もたってから、
理想のグレアムとレクター博士が
ドラマ『ハンニバル」によって登場するとは(/_;)

しかしビジュアルは1の時と同様、
むしろパワーアップして美々しく麗しくなっているものの、
内容は「サイコミステリー」というよりは、
「紙一重ッ紙一重だからッ」というツッコミ満載のドラマに。

1の終わりの時の不安通り、
推理パートは激減し、観念的なシーンがちりばめられていましたね(>_<)
それでも良質で鬼気迫るドラマであることには違いなかったですが。
カラーパターンの殺人事件なんて、とても良かった。

ただ、シーズン3で打ち切りって聞いたのも判る内容でした。
悪い内容とかグロがどう、っていうのではなく、
ターゲットが完全に特殊層に振り切ってるんですよ。
とにかく女性キャラが全員ひどい(笑)
男性キャラの美しさ、詩的な描かれ方、深いキャラ造形に比べ、
女性の方はもう、生き物のカタチをしているだけでしたねぇ。
(唯一レズのマーゴだけは魂が入ってた)

シーズンラストのウィルとレクター、ウィルとクロフォードの関係図は、
ものすごいドロドロの三角関係になっていて、
ウィルとクロフォードは組んでいる、とこちらは知っていても、
「あれ? もしかしてウィルはレクターに陥落するフリをして、
フリじゃないようにするあまり、そこに耽溺しちゃってる??」
と、ぐるんぐるん困惑するくらい。
少なくともレクターと一線を越えたアラーナの描かれ方は
蚊帳の外すぎて気の毒でしたね。
「いや、誰も眼中にないよ、お前…」
って感じで、1よりはるかにないがしろな扱いに(笑)
普通のドラマならヒロインなのに、
完全に当て馬扱いされて、それを本人もまったく理解してないのが、
なんというか、憐れでしたね。
「わたしを巡ってウィルとハンニバルが」
という痛々しい展開にすらしてもらえないという……(-_-;)
だって犬たちと再会できたウィルの満面の笑顔の方が、
出演女性陣の誰よりも可愛くて美しくて清純だったし。

一回しか観ていませんが、
ラストはすごく問題作になってて。
わたしの解釈としては……

① 
博士はウィルがラウンズを殺したと思い込み、
自分と同じレベル(なんだかよくわからないけど)にいるウィルが、
やっと自分と同じもの(なんだかよくわかr…)を見てくれたと歓喜。
ウィルと共に新婚新生活に旅立つことを夢見たりしちゃう。


ウィルは博士のしっぽを掴むため、
生き餌となってみずからもカニバル殺人犯である身を演ずる。

えーと、ドラマ内ではウィルの心情は言葉として描かれないんですが、
『レッド・ドラゴン』(原作)の彼の気持ちを考えると、
ウィルもまた社会病質者なんですよね。
彼はただ、とても上手に社会に溶け込める。
その一番の理由は善悪の判断能力で、
悪事を行えば処断されることを理解しているからだと思います。
だから彼はラウンズ殺害(ラウンズ殺害は原作ではレクター逮捕後です)時、
自分でも無意識に彼が殺される舞台を整えていきます。
明晰で優しい彼ならば、どんなことが起こるか判っていたはずなのに。
彼は「自分はそんな狡猾なことのできる完璧な人間じゃない」と殺意を否定します。
しかし周囲からすると、(特に博士からすると)
「ホントにそういう(純ぶるところ)とこ巧いよね」と。

ドラマ版は、このウィリアム・グレアムと、
わたしが個人的には〝老人の自己愛小説〟になってしまったと感じた原作『ハンニバル』内の、
成長したクラリスの心情が微妙に重ね合わされている気がします。
クラリスはFBIや組織そのものだけでなく、
そもそも人間というものに不審を抱くようになり、
最後は麻薬の効果もあって博士に陥落してしまいます。
ドラマ版のウィルは麻薬などは使われていませんが、
(奇しくも1では使われていたものの)
精神的にはかなり病んで、
博士の絶対的な価値観に傾倒していく様子が見事に描かれています。
また、そんな風に素直で、ちょっと小悪魔チックなウィルに、
博士の方もフラフラと浮かれ迷っている様子も描かれていましたね。


クロフォードはいわばウィルの飼い主。
ウィルも全面的に主人を慕い、やはりその絶対的な価値観に傾倒していたからこそ、
イヤでたまらなかった猟奇殺人のプロファイルをしてきたわけで。
ところがウィルはクロフォードに〝見捨てられた〟。
一度捨てられた記憶を犬はどうしても忘れられない。

そういうウィルの〝捨てられた犬の可哀想さ〟も、たぶん博士は気に入っていたんでしょうね。
もともと、クロフォードが可愛がっている素晴らしい猟犬を、
可愛くて毛並みが良くて他にはいない人のものを、
どーーっしても欲しかったに違いありません。
手に入らないなら壊そうか、としてみたり、
やっぱり大事にしようかな、と考え直してみたり、
気まぐれなサイコパスは困ったモノです。

ウィルは正義の秤においてクロフォードを信じ、
身を削って博士を罠にかけました。
しかしアラーナが余計なことをして、
ラウンズが早めに登場してしまったことで、
いよいよ博士はウィルの本心を知ることになってしまいます。
(彼のニオイから、死んだはずのラウンズのにおいを嗅ぎ取っていましたね)


レクター博士とウィルの新婚旅立ちの準備のほほえましさから一転。
悪と正義のガチンコ対決が始まり、
追い詰められたウィルはレクターにこっそり電話をかけます。
「バレてる」
その言葉の意味は、このシーンの後、
いるはずのない博士を見つけた時に、
「逃げているはずだ」
という呆然としたウィルの言葉に表れていました。
ウィルはレクター博士を逮捕するどころか、
ついには逃亡させたいと思うようになっていたってことですよね。

個人的には、
一緒には行けないけど、
博士を自分が味わったような、あのひどい環境には封じ込めたくない、という、
ウィルの限界ギリギリの正義だったんだと思います。
博士もまたウィルに「置いてはいけない」と返します。
この後の博士の切り裂きシーンは、
正直どんなエロいセックスシーンよりエロかったですね(/_;)
お互いがお互いを「そっちが裏切った」と思っているわけですし…。
ウィルは最初からずっと、博士に対して無垢な信頼を寄せていたわけで、
でも博士は〝自分自身〟を見てくれない不満をずっと抱えていたわけで。
博士は絶対に殺食人をやめないでしょうし、
ウィルはそれを絶対に許せない。
許せないけど、理解して同調してしまって、
同じ次元で理解し合ってしまったグロテスクな現実から、
結果としてウィルは逃れられないのではないかな、という気がします。

こんな複雑に男性同士の主義や想念が絡み合う話、
そりゃあアメリカ社会でウケるはずないですよ(笑)
ドンパチしたり、マッチョが死体の前でジョーク飛ばしたり、
水着の美女がウロついたり、金髪の捜査官が赤い唇で犯人をなじったり、
そういうステロタイプじゃないですもの。
あるいはセレブな女性がブランドを披露しまくったり、
ご近所トラブルとか不倫のしたい放題とか、
そういうの全然ないですもの(笑)
視聴率に関しては、グロがどうとか、そういう問題ではないとわたしは思います。

基本的には、狂人同士の心の機微を描いた作品なので、
理解してハマっているのはワールドワイドな腐女子と、
グロ耐性のあるゲイの方々だけだと思われます。


後付けでいろいろ想像はできるのですが、
ラストにモーリア博士と旅立ってしまったレクター博士。
ほんとにギリギリまで、あそこはウィルのための席だったんだと思います。
空っぽで旅立つこともできたけど、
おそらく、ひとりぼっちでは耐えられないほど、
ウィルの空けた博士の胸の穴は大きかったんでしょう。


その空席が一つと考えると、
やはりアビゲイルが博士の最後の贈り物だったような気がします。
ウィルが思いのほか〝自分の子供〟を大切にするので、
最後にこの贈り物を手にかけて、いよいよ同じ高みにのぼろうよ、
と、そんな感じだったんじゃないですかね。
もちろん博士にとってもアビゲイルは特殊な存在ではあったようですが、
2になってからはもう、博士の目にはウィルしか映らなくなってましたから。
だからあのバカオンナのアラーナが博士と寝たのを見て、
この鈍感さは表彰ものだと思いましたね(-_-;)

本当の意味でアビゲイルと三人、
家族のようなものになって旅立つ…
それが博士の夢見た乙女チックなロマンだったんじゃないですね~

さて、
シーズン3は、どうやら年内にも観られない可能性が高そうです(>_<)
なんかスカパー独占みたいなんだもの。
『レッド・ドラゴン』を独自解釈した展開になるようなので、
すごく観たいんですけどね。

ちなみに、最初にわたしが『レッド・ドラゴン』に運命を感じたのは、
まずウィリアム、という名前がわたしの好きなキ○ガイ、
ビリー・ザ・キッド(ウィリアム・H・ボニー)と同名だったことでした(笑)
そしてグレアム…。
三原順先生の『はみだしっ子』で一番好きだったグレアムと同名(´д`)
なつかしいなぁ。

海外の猟奇殺人ものなんて読むのイヤだなぁ、という人も、
もし美形の男性同士の史上まれに見る愛情深い抱擁シーンを観たかったら、
(まぁ、刺してんですけど)ぜひこのドラマ、最後まで観てください。


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