どっちも微妙な『鬼はさまよう』と『ゴーン・ガール』 [映画]

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『鬼はさまよう』
2015年韓国作品。

役者陣はいい感じに善玉、悪玉、箸休めキャラを演じてらっしゃいましたが、
いかんせん、物語のテーマ性が薄すぎる。
そもそもは何を描きたかったのか、
どこらへんに監督さんの猟奇的な美意識を割いたのか、
肝心な部分が「どっかで見たような描写」に終始していたので、
〝ここぞ〟というハイライトは見つかりませんでした。

・雨の中の追いかけっこ。
・一瞬目を離した隙に消えてしまう重要人物。
・刑事の身内から被害者。
・犯人の動機が不明瞭。

そういういくつかの韓国映画のお約束を踏まえたうえでも、
『チェイサー』とか、『殺人の告白』とか、
後発でも傑作は出てくるので、
やっぱりどうしても期待が大きくなっちゃうんですけど(^_^;)

『ビー・デビル』のコメンタリーで、
「わたしたち(日本の韓国猟奇系映画ファン)が思うほど、
韓国ではこの手の映画は作っていなくて、
やっぱり恋愛ドラマが主流。
この手の作品(猟奇系)はダメダメなのも多い」
って言われてましたけど、
この作品はそのダメダメな方に入りそうです。

主役と、その義弟の葛藤がドラマの核なんでしょうけど、
どちらの感情も言ってはなんですが、
かなり〝ありきたり〟なんですね。
被害者の主人公の妹さんが、実は妊娠していたとか、
事件の日は三人で夕食を食べて、
そのサプライズ発表をしようとしていたとか。
そういうネタで悲嘆を倍増させようという作り手の作為が見えすぎて、
あまり心を〝持っていかれない〟んですよ。
韓国映画では、この、〝持っていかれる〟感があると、
些細な欠点も目をつぶりやすくなるんですが…。
特に警察の無能っぷりとか(笑)
「そこまでひどくないだろう」
って思わずに済むというか。

『殺人の告白』では、後手に回る主人公と同調する展開から、
ラストの種明かしでのカタルシスが凄まじく、
(興味のある方は絶対にネタバレなしで視聴してください)
別々の道を進みながらも犯人を追い詰めていく被害者遺族たちの悲憤が、
これでもかと感じられたし、
たぶんこの作品も、
あんな風に感情移入させたかったんじゃないかなぁとは思います。

ヤクザネタがいらなかったんじゃないかなぁ(^_^;)
あのネタで話を引っ張るより、
個人的に好きな描き方ではないですが、
『悪魔を見た』っぽく、被害者が何をどうされたのかを描き、
(この作品でも刑事の妻の妊娠女性が被害者となり、恐ろしく残忍な目に遭います)
犯人がどういう気持ちで犯行に至ってるのか、
そっちに比重を置いた方が、
むしろテーマが浮き彫りになったような気がします。
どっちにしてもウンザリすること請け合いですけど…。

あと、ちょっと蛇足ですが、
犯人をサイコパスとしてここまで〝わかりにくく〟描く必要はない気がします。
サイコパスの怖いのは、非日常性があらわだからではなくて、
日常にひょっこり潜んでるからです。
普通に挨拶していた隣人が、
タケノコの皮を剥くように人の皮を剥いでいたら…という恐怖。
この作品の犯人は、顔つきからして異常者ですし、
絶対に職質にあいまくる目つきと態度です。

うーん(´д`)
もうこの手の韓国作品は、
相当ハードルが上がってしまっているので、
あまりこういう猟奇殺人事件ものは観ない、
という人ならばドキドキしつつ観られると思います。
そうでない人には、ちょっとオススメできません。


     
『ゴーン・ガール』
2014年公開作品。

デビッド・フィンチャーらしい良作。
世間ではかなりの高評価。
でもフィンチャーっていつもこんな感じの作品なので、
それほどビックリ展開には感じませんでしたね。
フィンチャーの作品は代表格はいくつか観てるんですが、
(『エイリアン3』『セブン』『ゲーム』他)
今までスッキリさせてもらったのは『ゲーム』だけですね~
(『ドラゴン・タトゥーの女』は、特にフィンチャー臭さなかったですし)
この『ゴーン・ガール』にしても、
ベン・アフレックの中途半端なイケメン風存在感も含めて、
始終モヤモヤして、ラストもモヤモヤして、
結局モヤモヤ感しか残らないという。
伊東四朗の頭に緑のトゲトゲボールがたくさん降り注ぐ展開です。
(嘘です)

今までフィンチャーの作品に触れてこなかった、
という人には、入り口としては良作なのではないでしようか。
展開としての納得感とは裏腹の、
なんていうのかなぁ……
フィンチャーって人は、実はすごく恵まれた人で、
幸福が判らないくらい不幸に憧れてるのかな……
とか、うがった見方をしてしまいます。
この作品でも、
旦那さんは自分が恵まれた立場にいたことを鑑みてないし、
奥さんは更にすごい、超のつく
〝わたしがヒロインじゃなきゃイヤっっ〟
という性格(´д`)
このすごい非常識な展開や、異常な精神構造がなかったら、
フィンチャー作品らしい物語にはならないから、
ソレはソレ、ってことなんでしょうけどね。

ちなみに、わたしはフィンチャーだとは思って観てなくて、
途中で、「アイツなんじゃねーの?」
と、思ったらやっぱりそうだったという。

だからフィンチャーが元々好きじゃないという人は、
観ない方がいいですよ。
わたしも実は『エイリアン3』が大嫌いなんで、
かなり苦手な監督さんなんですが、
『ゲーム』は好きなんですよ(-_-;)

また『ゲーム』みたいなスカッとする傑作つくってくれないかなぁ。
でもアレも、『セブン』系が好きなファンの人には、
駄作って言われているんですよね~しょぼん(´д`)

とにかくフィンチャーがどういう監督か知ってる人には高評価です。
そうでもない人にとっては、「またか」って印象が強い。
好きな人には好かれる、っていう、
ある意味監督冥利に尽きるんじゃないかな、という作品。

ラストは賛否両論ですが、
わたしなら、寝首をかかれそうで一生熟睡できない生活はごめんです。

この作品は、むしろ普段、映画はあまり観ない、
っていう一般の方に、前知識ナシで観てもらうのがオススメかもしれません。
特にゲスなんちゃらの鬼頭みたいな頭した人は、
配偶者や浮気相手の方と観ると主人公に共感できるかもしれませんね。


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