むっちゃ嵐「イントゥ・ザ・ストーム」と、むっちゃ食べてる海外ドラマ「ハンニバル」 [映画]

     
「イントゥ・ザ・ストーム」
期待しないで観ると意外に良い、という典型的な作品。

物語は〝これだ!〟という要素もないまま、
一つの町にすんごい嵐がやって来る、という、ぶっちゃけそれだけです。
人間ドラマはそこらへんによくある程度だし、
竜巻に向かっていくパッとしないストーム・ハンターという設定も、
「ツイスター」からまったく進化していません。
だから要素をつまむと、超のつくB級としか言いようが無いです。

しかし!
B級はB級でも、良いB級なのです。
死ななくてよい人は死なず、
余計な人間ドラマで尺を取らず、
登場人物はみんなキャラが立ってる。
一時間半でさっぱりと観られる!
竜巻表現は基本的に「ツイスター」から進化していませんが、
すべてがグレードアップしてはいました。
飛ばされるのは牛ではなくトラックとか、
竜巻の目を昇った先に見える景色とか。

人間ドラマがスキとか、有名俳優が観たい、
という方にはオススメできませんが、
一時間半、退屈したくない人にはオススメの良作品です。


     
「ハンニバル」
まだシーズン1のラストまで観ていないんですが、シーズン3の放映が決まったそうです。

ハンニバル、というのは「羊たちの沈黙」で超絶有名になった猟奇殺人犯の名前です。
わたしは「羊たちの沈黙」が好きで、原作のトマス・ハリス版も読むようになったのですが、
正直原作としては「羊たちの沈黙」が最高傑作で、
個人的な趣味に合うのは「羊…」の前日譚にあたる「レッド・ドラゴン」です。
このドラマは、「レッド・ドラゴン」の更に前日譚が描かれています。
トマス・ハリス版の「ハンニバル」を読んでガックリ落胆して以来、
トマス・ハリスが続編を描いたりはしていないと思うので、
(「ハンニバル・ライジング」とか書いてたらしい!)
このドラマは別人によって純粋に書き下ろされた作品でしょう。
……ちょっと長くなるので、詳しい感想は下にたたみます。

このドラマ、猟奇的な表現が近年ないほど芸術的です。
かつては「ザ・セル」(2000年作品)や
「カル」(1999年作品、わたしにとって猟奇殺人を描いた映画としては最高傑作)、
「クリムゾン・リバー」(2000年作品)
など、「羊たちの沈黙」のヒットに伴って、
わんさかと製作された猟奇殺人作品ですが、
最近はとんとご無沙汰(´д`)
というか、自分でも思いますが、
鮮血描写や死体損壊などを芸術的に表現するのは、
悪趣味というか、不謹慎な世の中になってしまいましたよね。

そういう、規制の中で趣味を貫き、
静かで淡々とした狂気の世界を描いているこの作品、
随所に原作に捧げるフレーズや表現が出てきます。
殺人犯であり食人嗜好のレクター博士ではなく、
FBIの特別捜査官であるウィル・グレアムを〝怪物〟として描く傾向も、
わたしとしては大好物です。

原作が好きだった方(ただしクラリスとレクターのキモイカップルが好きな人には無意味)
特に「レッド・ドラゴン」が好きだった方に超オススメの作品です。

……以下、原作やそこらへんにまつわる個人的な感想。


2001年の映画、「ハンニバル」の監督はリドリー・スコットなんですね~
そのせいか、わたしにとって、生まれて初めて、なんと映画館で寝てしまう!
という体験をしたクソ映画にもかかわらず、
意外と高評価をつける方もいるようです。
(ちなみに眠っちゃったのは、えんえんと車でキレイなところを走ってるシーンです。
空撮のうえ、高級車のCMみたいに無意味なシーンなんだもん…)

とりあえず原作を読んでから映画を観たと記憶していますが、
とにかく原作じたい、途中でウンザリした。
たぶん男の人には理解しがたい気分の悪さだと思います。

この作品はトマス・ハリス自身がクラリスを演じたジョディ・フォスターを気に入り、
〝彼女のために〟続編映画となると決まっていたうえで書き下ろしたものでした。
もちろんそういう理由や経緯は世界中で知られていましたが、
いざ映像化される段になると、肝心のジョディが降りてしまいました。
具体的な降板理由は述べられていませんが、
原作を読んで〝引いた〟のも無理ないと感じましたね。

ジョディが引いた理由は、
ラスト近く、気にくわない男の頭を生きたまま切って脳みそを活き作りにして食う、
という冗談みたいな猟奇シーンと、
FBI捜査官としての重責から麻薬に走り、しだいに明晰な判断力を失っていくクラリス、
というキャラ設定のせいだと言われています。
しかしわたしが一読した時、一番感じたのは、
トマス・ハリスがレクター博士になりきって、
「ジョディちゃんと結婚するんだ~」
と、wktkしつつ描いたキモさでした。
頭の良い、ストーカーに粘着されやすいジョディさんが、
「このじーさんキモっ!」
と思ったのは間違いない気がします。

映画では、FBI捜査官のクラリスは、レクター博士と愛・逃避行
みたいな愚行には陥りません。
ジョディの代わりにクラリスを演じたジュリアン・ムーアさんも、
脚本はさんざん直させたそうですが、さもありなん…。
脳みそくぱぁのシーンは普通にあるので、どう考えても、
ラストでレクターと逃げて新婚食人旅行をやめさせたかったのだと思います。
(そうなんですね~原作ではクラリスも「ウマー」と食人しちゃうんですよ)

アンソニー・ホプキンスが悪いんじゃないのは判っていても、
これ以降、どうしてもトマス・ハリスの怨念が染みついて、
若い女の尻を追い回すジジイに見えて仕方ありません。

そんな感じで、わたしはもうトマス・ハリスの読者ではなくなったのですが、
レクター博士の若き日を描いた「ハンニバル・ライジング」(2007年)は普通に観ました。
ここでは博士は若くてハンサム、しかも長身という、
トマス・ハリスの「こんな僕だったらどんなにか…」という生々しい声が聞こえてきそうな設定。
映画は滑ったり滑ったり滑ったり(´д`)
いや~続編とはたいてい滑りまくるものですが、
この作品も世間にまったく相手にされないという滑りまくり具合がすごかった!
「羊たちの沈黙」を劇場で観て、
そのブームを味わってきた層からしたら、
「どうしてこうなったか判りますか?」
という映画論を展開したいくらい。
それほどに、この物語の世間的評価は墜ちていたのです…。

しかし、一転!
ドラマ「ハンニバル」(おそらく苦肉のタイトル)は、原作のおじーちゃんを排することで、
原点回帰してくれたのでした。

こんなもん、好きな人の間でしか話題にならねーよ、
というくらい訥々と描かれる猟奇の世界。
わたしが好きなのは、ウィルが足音を感じると、無意識に脳内で鹿に転じてしまう映像。
鹿はウィルの中で人肉に変わるメタファーであり、
骨にすることでナイフやメスといった刃物のメタファーともなるようです。

レクター博士に関しては、常々、
「レッド・ドラゴン」によって狂気度において
ウィル>レクター
……レクターがグレアムに苛立ちを抱いている描写があり、
犯人のダラハイドがグレアムを「化け物だ」と恐れて認識する描写がある。
また巧妙な誘導によって、無意識にフレディ・ラウンズを被害者として殺害させる。

「羊たちの沈黙」によって明晰さにおいて
ウィル>クラリス
……レクターを逮捕したのがグレアムだという描写がある。

「ハンニバル」の映画化と現実の事情によれば
クラリス|越えられない壁←LOVE←レクター

と理解していたので、
〝この世界〟に関して最強はグレアムなのだな、と思っていました。
だからたいていの人が夢中のレクター博士は、基本的にどうでもいいのです。
しょせん人殺しなので、一線を越えた人にはあまり興味がわきません。

グレアムを演じているヒュー・ダンシーがまたぴったりで良いです(*_*)
膝を抱えているよわっちぃ図が好きですね。
「これが僕の見立てだ」
という決めぜりふがありますが、そこに至るまでの描写も美しくて見応えあります。

このドラマを撮影しているフラーさんという人はゲイだそうで、
二次創作にも理解があるとか。
だからこそ、〝この世界〟の美しさ、残酷さを、
今やおじーちゃんより濃密に描ききることができるのかもしれません。

ちなみにこのドラマではフレディ・ラウンズが登場するのですが、
意外にこのキャラ、原作で出番が多いのです。
そしてものすごくイヤなヤツなの。
ドラマでもウィルの感じているストレスが理解できるので、
ムキーッとなるのですが、将来どうなるか知っているとあまり腹も立ちません(^_^)
(功名心を逆手に取ったウィルのトラップにかかり、猟奇殺人犯に捕らわれて拷問されるうえ、
車いすに縛り付けられて生きたまま燃やされて斜面を転がり落ちてきます。
ちなみにこのときフレディは「グレアムにハメられた」と認識していますが、
グレアムはここでもまた、「僕はそんなひどいことしないし」「でもあのザマは面白かったな」という、
自分の内面の葛藤にもがき苦しむことになります)

あー
三が日から好き勝手暴走してますな(笑)
最後まで読んでくださった方はありがとうございますm(__)m

ドラマはホントにオススメです。


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