想像を超えてくれない「白ゆき姫殺人事件」と、思いのほか面白い「ザ・コール 緊急通報司令室」 [映画]
「白ゆき姫殺人事件」
井上真央ちゃん主演。
綾野剛とか、菜々緒ちゃんとか、芸達者な人たちがズラッと出演してました。
ところが、正直、それだけかなぁ…。
同じ湊かなえさん原作の「告白」は（原作未読）、
わたしにとっては好みの映画ではありませんでしたが、
良作の部類に入っていたと思います。
松たか子がただのお嬢さん女優でないところを見せつけた映画でもありました。
個人的にはウェルテルを演じた岡田将生の、
演技とも素ともつかないリアルなアホ教師像もゾッときましたし。
全編に漂う厨二病特有の、『えっ、世界の主役ってオレでしょ？』感もよかった。
ただわたしは好きじゃないけど（笑）
「白ゆき姫殺人事件」の方は、
基本的にサスペンスでもミステリーでもなく、
推理ものですらない作品でした。
はじめて地下板を覗いた人がびっくりして書いちゃったみたいな脚本で、
観ていて困惑することしきり。
ネットをやらない層の人や、
想像力が大幅に欠落した人には、
『すごい！』と思えるような内容かもしれません。
この作品の中では、たとえば警察が現在どんな捜査段階にあるのか、
観客には知らされません。
警察なんてものがこの社会にあることすら失念されているような
いい加減な報道がまかり通っているのが基本的な世界観です。
なので、当たり前ですが、警察が関係者のところにやって来る描写などはなく、
最後までマスコミの末端でゴハンを食べている人の想像の世界を
執拗に観せられることになります。
この、綾野剛さん扮する赤星さんは、
元カノの噂話だけを情報源に、
〝こうなんじゃないかな？〟というイメージの元に
関係者たちに取材していきます。
当然、偏ったイメージだけに固執するし、凄いことに、
そこに迷いや逡巡などといった描写はいっさいありません。
（そういう人間性を描く映画だからでしょうね～）
前宣伝などの感じだと、
関係者の各証言でいろんなヒロイン像が出てくる、
とのことだったですが、
うーーん、わたしが観た感じでは、それはなかったですねぇ。
意外とこのヒロインはみんなのイメージ通りの人で、
悪い人ではないけれど、別に良き人というわけでもない、
ただ要領の悪いどんくさい人というだけだった気がします。
呪いがどーのこーのなどという眉唾話も出てきますが、
子供の戯言の域を出ないので、
これで本気で怖がっていたとしたら、精神年齢を疑うべきでしょう。
子供時代のエピソードに関しては気の毒としか言いようが無く、
物語性のために親が非道に描かれているので、
リアリティの欠落をより強く感じました。
ラスト近くになり、ヒロインのモノローグが始まりますが、
これも、前述したように、捜査組織などこの世にないという世界観なので、
別に誰も現実ではなんにも責めていないのに、
勝手に遺書をしたためているという…。
うううーーーーーんんんん。
落ち込む気持ちは判るけど、とりあえずウジウジすんなよ、
って感じですかね…。
そんなわけで、
思っていたよりフツーの映画でした。
怖くもないし、びっくりもしないし、盛り上がりもなく、淡々と。
映像などはキレイですし、
これといって反則技なども使っていないので、
期待せずに観る分にはそこそこいけます。
90分くらいでまとめてくれたら良作の部類だったのに…。
二時間越えてんですよねぇ（-｡-;）
個人的には嫌われることを厭わず、
〝求められてるのはこういうオンナだろ？〟という
ステロタイプな美人を演じきった菜々緒さんにハラショー。
「ザ・コール 緊急通報司令室」
ハル・ベリーさん主演。
正直まったく期待していなかったのが幸いしました。
すごく面白く感じたので（笑）
この映画は94分。
すごい！
さすがハリウッドやん(´Д`)
上記の「白ゆき姫…」が二時間ちょい越えなことを考えると、
素晴らしいコストパフォーマンスの良さ！
無駄な描写はなく、盛り上がり、途中の閑談も挟みつつ、
ラストに向かって突き進む。
正直、確かにラストは賛否両論だと思われます。
わたしも、この手の解決方法は大嫌いです。
でも今回は「まーいっか」と思いましたね。
あとですねー、この作品のわたし的な好感ポイントは、
犯人のワタワタ感をたくさん出してきたことでしたね。
この手のサイコ映画だと、犯人は終始落ち着いていて、
感情を示さず、犠牲者の緊迫感だけが描かれていたものですが、
この作品は全員の感情表現が描かれるので、
短い中でもドキドキ感が上がるんだと思います。
グロシーンはわずかですが、ピンポイントで痛かったりします。
ゾッとする描写も多いんですが、
それだけにラストのカタルシスがたまらないかと。
相変わらず「お前はなんで一人で行くかな」というお約束もありますが、
94分、過度な期待さえしなければ、
かなり高得点のサスペンスを楽しめるので、オススメです。
